旧陸軍研究施設「登戸研究所」「5号棟」解体作業3月に/最後の見学会20日

by ihst | 2月 18th, 2011

 明治大学生田キャンパスの旧陸軍研究施設「登戸研究所」の一施設「5号棟」の解体作業が、今月中に始まることが決まった。3月中にも終了する見込み。登戸研究所で現存する建物は、木造平屋建ての5号棟と、昨年3月に「登戸研究所資料館」として開館した鉄筋コンクリート造の建物のみ。5号棟の解体で最後の木造建物がなくなる。
 登戸研究所は旧日本陸軍科学研究所の「登戸実験場」として1937年に開設された。米国本土を攻撃する風船爆弾や生物化学兵器の開発などが秘密裏に行われた。
 5号棟は40年前後に建設されたと推定され、中国の経済を混乱させるために偽札を印刷する工場だったといわれている。同大学は、老朽化して地震などで倒壊する危険性があることから、解体して農学部の教育施設を新たに建設することを決めた。
 同大学は「5号棟跡などに戦争遺跡が存在したことを示すモニュメントを設置するなど、戦争の時代の出来事を後世に伝えていきたい」としている。
 最後の公開見学会が20日午前10時から行われる。事前予約不要。問い合わせは同大学電話044(934)7553。
  以上 「神奈川新聞」 http://bit.ly/fNAy0J 「カナロコ」 http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1102130009/ より引用。

2月21日朝日新聞に関連記事:
  見学会には600人ほど参加、偽札製造用の部屋などが公開された・・・・21日に解体工事に着手・・・
  登戸研究所の正式名は、「第九陸軍技術研究所」。細菌やウイルスを使った「生物兵器」や気球に爆弾をつけて米国本土を狙った「風船爆弾」などの開発が行われた。偽札工作は最初から行われ、5元札から200元札まで総額45億元分を製造、約25億元が・・・使われたとされる。・・・・偽札工作の実態を明らかにしたのは・・・・・栃木県小山市の・・川津敬介さん・・・。証言によると、最大約130人が、「製紙部門」「製版部門」「印刷部門」など(で)働いていた・・・・・・・・(偽札の)運搬は、主に陸軍中野学校の出身者が担当し、長崎から船で上海に送った・・・川津さんも一度だけ上海に同行した。運搬係は、・・・偽札を2,3束もらえ・・・登戸研究所員は特権階級で、身分証を見せれば、汽車や船舶は乗り放題だった・・・・。敗戦後は、資料の焼却が命じられ、ほぼすべての資料を燃やした・・・。(以上 朝日新聞2011.2.21より)

 なお、文献としては、
   伴 繁雄『陸軍登戸研究所の真実』 2001、『フィールドワーク陸軍登戸研究所』 姫田 光義 、『陸軍登戸研究所―隠蔽された謀略秘密兵器開発』 (明治大学人文科学研究所叢書) 海野 福寿 、『風船爆弾」秘話 櫻井 誠子、『秘話 陸軍登戸研究所の青春 (講談社文庫) 新多 昭二 (文庫 – 2004/2)、陸軍登戸研究所―隠蔽された謀略秘密兵器開発 (明治大学人文科学研究所叢書) 海野 福寿、渡辺 賢二、、 山田 朗 (単行本 – 2003/3) 、『謀略戦 陸軍登戸研究所 』(学研M文庫) 斎藤 充功 (文庫 – 2001/11)、『高校生が追う陸軍登戸研究所』 赤穂高校平和ゼミナール、 法政二高平和研究会 (単行本 – 1991/3)、『謀略戦―ドキュメント陸軍登戸研究所』 斎藤 充功 (単行本 – 1987/5)、『私の街から戦争が見えた―謀略秘密基地・登… 』川崎市中原平和教育学級 ( 1989/7)、『第二次世界大戦の「秘密兵器』がよくわかる本 (PHP文庫) 株式会社レッカ社 (文庫 – 2009/11/2、などが古書等も含めて入手可能である。

  また、関連する 陸軍中野学校については、加藤 正夫『陸軍中野学校―秘密戦士の実態 (光人社NF文庫) 』 、畠山 清行・保阪 正康『秘録・陸軍中野学校 』(新潮文庫) 、斎藤 充功『陸軍中野学校の真実 諜報員たちの戦後』、斎藤 充功『陸軍中野学校 情報戦士たちの肖像 (平凡社新書) 』 など。

 また、レーダー開発との関係もでてくるが、これについての学術研究的には、河村豊『第2次大戦中における日本海軍の電波兵器開発の歴史』東京工業大学学術博士学位論文など、下記の河村の海軍との関係の研究が関連している。
  「1930年代のマグネトロン研究と海軍技術研究所 -伊藤庸二の多相高周波研究構想と実用マグネトロン開発- 」 『科学史研究』 (河村 豊) 第38巻/No.210, pp.71-82 1999年夏 (学術雑誌)
  「レーダー開発計画の決定過程 -太平洋戦争直前期の旧日本海軍の取り組み- 」 『科学史研究』 (河村 豊) 第38巻/No.211, pp.165-172 1999年秋 (学術雑誌)
  「旧日本海軍における科学技術動員の特徴 -第2次大戦期のレーダー研究開発を事例に 」 『科学史研究』 (河村 豊) 第39巻/No.214, pp.88-98 2000年夏 (学術雑誌)
  「旧日本海軍における戦時技術対策の特徴 -第2次大戦期の実用レーダーを事例に-」 『科学史研究』 (河村 豊) 第40巻/No.218, pp. 75-86 2001年夏 (学術雑誌)
  「旧海軍技術研究所にみる研究開発体制の特徴」 科学史学会技術史分科会編『技術史』 (河村 豊) /第2号, pp.18-30 2002年5月 (学術雑誌)

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