2011.2.21武田薬品工業・ダーゼン自主回収

by ihst | 2月 23rd, 2011

2011.2.21 武田薬品工業は、慢性気管支炎患者への消炎酵素剤ダーゼン(セラペプターゼ)が、痰を切る効果や足首のねんざで腫れをひかせる効果が、00~09年に同社が行った試験で有効性が認められなかったとして、自主回収すると発表した。(朝日新聞2011.2.22,武田薬品工業ホームページ・消炎酵素製剤「ダーゼン®」の自主回収について http://www.takeda.co.jp/press/article_41340.html)2011年1月19日の薬事・食品衛生審議会医薬品再評価部会において、本薬品の有効性に関する「再評価指定の可否とそのために今後実施する試験の内容について議論が行われ」、再試験では、「現在の医療環境において使用実態に則した有効性を検証するよう指摘があり、厚生労働省よりその指摘を検討するよう指示があ」り、「再試験の実施可能性について、検討」したが、「当社では、臨床試験デザインを見直した上で再試験を実施することで、本剤の有効性を証明できるものと考えておりましたが、最終的に再試験の実施は困難との結論に至りました」という。(前記HP)
 投稿者も、ダーゼンを何度もホームドクターから処方されてきたので、ダーゼンといえば親近感がわくが、効果がないものであったとは!
HP曰く「本剤は、1968年から40年以上にわたり日本で販売されており、・・・・09年度国内販売実績は67億円」にのぼる。これほど多くの販売をしてきたものが、薬効を証明できないとは、投与されてきた患者にひとことあるだろうと、ホームページを覗いたところ、「本剤の自主回収に当たっては、医療現場や患者さんに混乱をもたらすことのないよう医療関係者の皆さんに迅速かつ正確に情報伝達してまいります。」とあるのみで、患者への謝罪めいた言葉は一言もない。混乱のないように・・・・迅速かつ正確に情報伝達する」とはどういうことをいうのであろうか。まさか、うまく言いくるめるというのではなかろうかと勘ぐる向きもでてこよう。過去40年間ずっと有効であったが、最近だめになっただけとでもいうのであろうか。あるいは、一般的には薬効を証明できないが、あなたの場合は有効だったというのだろうか。さらには、有効だと考えている、そうでないというのならそのことを証明して見せてくださいと開き直るかのだろうか。「ホームページに堂々と書かれている「本件回収が今年度の業績に与える影響は現時点では軽微であると見込んでいます。」という言葉は、あまりに株主優先で患者への配慮がない経営優先の姿勢が露骨に現れたものではなかろうか。企業経営倫理に照らして胸をはれる言葉であろうか。
 同社が、『舎密開宗』などの刊行手沢本、自書稿本類、肖像画、宇田川家伝来の蘭引等、延べ50点が認定化学遺産 第001号とされた杏雨書屋蔵/宇田川榕菴化学関係資料、日本化学史上貴重な文献の保存をサポートしてきている功績と照らし、今回の対応をどのように解釈できるか、複雑なおもいにもかられる。
 また、言うまでもないことであろうが、日本の薬事行政(認可や認可後のチェック)の検討に投げかける問題として大きなものがあろう。(2.25一部補筆表現変更)

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