保安院 海への汚染水、ゼロ扱い 「緊急」で法適用外

by ihst | 12月 17th, 2011

東京新聞は2011年12月16日 朝刊で、表記の件で、次のように報じた。(以下中段まで引用.但しweb版http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2011121602000186.htmlより)
  「福島第一原発事故で、何度も放射性物質を含む汚染水が海に漏出したが、経済産業省原子力安全・保安院は「緊急事態」を理由に、法的には流出量は「ゼロ」と扱ってきたことが本紙の取材で分かった。今後、漏出や意図的な放出があってもゼロ扱いするという。政府は十六日に「冷温停止状態」を宣言する予定だが、重要な条件である放射性物質の放出抑制をないがしろにするような姿勢は疑念を持たれる。 
 原子炉等規制法により、電力事業者は、原発ごとに海に出る放射性物質の上限量を定めるよう決められている(総量規制)。福島第一の場合、セシウムなどは年間二二〇〇億ベクレルで、年度が変わるとゼロから計算される。
 しかし、四月二日に2号機取水口近くで高濃度汚染水が漏出しているのが見つかり、同四日には汚染水の保管場所を確保するため、東京電力は建屋内のタンクに入っていた低濃度汚染水を意図的に海洋に放出した。
 これら二件の漏出と放出だけで、原発外に出た放射性物質の総量は四七〇〇兆ベクレル(東電の試算)に達し、既に上限値の二万倍を超える。
 試算に対しては、国内外の研究機関から「過小評価」との異論も出ている。
 今月四日には、処理済みの汚染水を蒸発濃縮させる装置から、二六〇億ベクレルの放射性ストロンチウムを含む水が海に漏れ出した。
 さらには、敷地内に設置した処理水タンクが来年前半にも満杯になる見込み。この水にもストロンチウムが含まれている。東電はできるだけ浄化して海洋放出することを検討している。漁業団体の抗議を受け、当面は放出を見送る方針だ。
 保安院は本紙の取材に対し、事故への対応が最優先で、福島第一は損傷で漏出を止められる状態にない「緊急事態」だった点を強調し、総量規制を適用せず、四七〇〇兆ベクレルの漏出をゼロ扱いする理由を説明した。
 「緊急事態」に伴う特例扱いは「事故収束まで」続くとも説明したが、具体的な期間は「これからの議論」とあいまい。
 今後、仮に放射性物質を含んだ処理水を放出したとしても、ゼロ扱いを続けるという。」
・・・・以上引用・・・・
 保安院の今回の措置は、第一には、事故全体の実態を把握・公開する姿勢に根本的な疑念を呈するものである。放射線物質が、海陸を問わず、全体としていかなるものであったかは緊急事態であるからこそ明確にしなければならない。海への放射線量を削り、公開しないことは、事故全体を過小評価することにつながりかねない。こうした、ある事実を隠蔽し過小評価しようとするやり方が、政府や、保安院、東電の発表への信頼性なくしてきたことをまったく学んでいない。
 衆知のように、「メルトダウン」の時も、「炉心損傷」という用語を長らく使い、炉心溶融を認めなかった。某有名大学の専門家は、テレビ出演で、メルトダウンというアナウンサーにくってかかって、「メルトダウンという用語は学問的にはXXXで、今の状態とは違う」と政府・保安院の肩をもつ御用学者ぶりを見せつけたが、原子力関係専門家は、きちんとしたデータを公表するよう、政府・保安院・東電に強く要求すべきではないか。
 第二に、海への放出量をきちんと見ないということは、海の汚染を正視しないという、これも重大な問題である。現在、漁師たちは、市場での魚の市場問題で辛酸をなめている。先日は、東電が、排水を海に放出するという考えを述べ、漁業関係者から猛烈な抗議を受けたばかりである。データをあいまいにし、実際には汚染対策がとられない、そして、漁獲物に疑問を呈する消費者には「風評に踊るな」「被災者に絆を」といっても、こうしたやり方はもう誰も信じなくなっており、被災者と国民全体を愚弄するもので、被災者を救う道ではない。

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