by ihst | 4月 21st, 2015
本研究所の佐野所員が下記研究会で発表されます。
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第76回現代科学技術論研究会
「社会のための科学/研究」というイデオロギーの行方:モード論・トリプルヘリッ
クス論・ポストアカデミックサイエンス論の現在」
2015年5月9日(土) 13:00-18:40
場所 国士舘大学・梅ヶ丘校舎34号館 3階 308室
小田急線・梅ヶ丘駅下車、徒歩10分です。
本研究会は、木原英逸シラの主催するもので、その今回の趣旨は
「よく知られるように、1990年代半ばに、ギボンズらのモード論(1994)、エツコ
ウィッツらのトリプルヘリックス論(1995)、ザイマンのポストアカデミックサイエ
ンス論(1996)など、科学・学術政策の変化につながる、科学のシステム観の「同時
多発」的変化が起こった。その後も、様々な研究が様々な変化を指摘してきており、
今や、モード3、4重らせん、5重らせん、も議論されている。
なぜこのような「同時多発」の変化が起こってきたのか、そこに共通する背景構造は
何か。各論の異同も含めて、この変容について再考すべき時であろう。」とあります。
プログラムは・・・・・・・・・・・
13:00-14:40 (討議40分、以下同) 木原英逸 「モード論の社会的機能:モード
1、2、3」
ギボンズらが提唱した、科学/研究政策「モード論」は2本の柱で支えられている。
ひとつは、企業の研究開発組織を、市場のいっそうの(競争)市場化、需要の流動化
に即応できるものにする必要であり、それに貢献できるよう、政府や大学の研究組織
を変える必要である。もうひとつは、政府や大学の研究組織を、いっそう分断化、
ネットワーク化、サードセクター化する(政治)社会に貢献できるものにする必要で
ある。そして両者をつなぐのが、モード2の特性とされる、アカウンタブルで、リフ
レキシブな、社会的責任研究という規範である。
市場化とそれを補完するサードセクター化は、現代社会の特徴であり、それに支えら
れるがゆえに、「モード論」(的思考)は広く説得力をもってきた。日本のSTSも
モード論を支えに1990年代半ばに転回し、知識生産~イノベーション論では、いま
も、モード3が論じられる。しかし、時代の社会構造を反映するモード論は、この時
代の歪みをも映し出す。その点を具体的に指摘したい。
参考文献
●M. Gibbons, et.al.,The new production of knowledge,1994. = M. Gibbonsほ
か『現代社会と知の創造』1997.
●N. Helga, P. Scott and M. Gibbons, Re-Thinking Science. Knowledge and the
Public in an Age of Uncertainty. 2001.
●N. Helga, P. Scott and M. Gibbons, Introduction:‘Mode 2’ Revisited: The
New Production of Knowledge; Minerva, Volume41, Issue3, 179-194, 2003.
●M. Gibbons, et.al., INTRODUCTION Revisiting Mode 2 at Noors Slott,
Prometheus, Vol29, No.4, 2011.
15:00-16:40 佐野正博 「モード3論とイノベーション論」
21世紀におけるイノベーション・エコシステムの中核をなすものとして、モード3と
いう新しい知識生産モードの存在が主張されている。モード3の中核をなす考えとし
ては、knowledge-based and innovation-based democracy、モード1大学、モード2
大学、モード3大学、academic firms、commercial firmsによるイノベーションの非
線形モデル(model of non-linear innovation modes)などがある。当日は、下記参考
文献中のCarayannis, E.G. and Campbell, D.F.J. (2012)を中心にモード3論の紹介
をおこなう。
参考文献
●Carayannis, E.G. and Campbell, D.F.J. (2006) “Mode 3″ in Carayannis, E.G.
and Campbell, D.F.J.(eds.) Knowledge Creation, Diffusion, And Use in
Innovation Networks And Knowledge Clusters: A Comparative Systems Approach
Across the United States, Europe, And Asia, Chapter 1.
http://books.google.co.jp/books?id=Ik3PWtNobq8C&lpg=PR12&ots=0wYI9VqWuc&dq=m
ode3 20knowledge&hl=ja&pg=PA1#v=onepage&q=mode3%20knowledge&f=false
●Carayannis, E.G., Ziemnowicz,C. (eds.) (2007) Rediscovering Schumpeter.
Creative Destruction Evolving into “Mode 3”.
●Carayannis, E.G. and Campbell, D.F.J. (2011) “Open Innovation Diplomacy
and a 21st Century Fractal Research, Education and Innovation (FREIE)
Ecosystem: Building on the Quadruple and Quintuple Helix Innovation Concepts
and the “Mode 3” Knowledge Production System.” Journal of the Knowledge
Economy 2 (3), 327-372.
●Carayannis, E.G. and Campbell, D.F.J. (2012) “Mode 3 Knowledge Production
in Quadruple Helix Innovation Systems : Twenty-first-Century Democracy,
Innovation, and Entrepreneurship for Development,” Springer Briefs in
Business 7, 1-63.
http://www.springer.com/cda/content/document/cda_downloaddocument/9781461420
613-c1.pdf
●Etzkowitz, H. and Leydesdorff, L. (2000) “The Dynamics of Innovation:
From National Systems and “Mode 2” to a Triple Helix of
University-Industry-Government Relations” Research Policy 29, 109-123.
●Harkins, A. M., Vysoka, A., and Mollberg, B. L. (2005) “Strategies for
innovation in tertiary education: Producing Mode III knowledge and personal
capital” Theory of Science, XIV/XXVII (1/2005), 69-88.
●Sandstrom, Gregory (2014) “Higher Education and Science for Development:
The Historical and Conceptual Foundations of Mode 3 Knowledge,”
Education Sciences & Society, 1/2014, 15-44.
http://riviste.unimc.it/index.php/es_s/article/view/927
17:00-18:40 勝屋信昭 「ジョン・ザイマンの科学論」
ジョン・ザイマンは、科学論の草分け的な存在である。物理学者というバックグラン
ドを持ちつつも、当時のSTS論にも詳しかった。今回は、ザイマンの晩年の科学論を
Real Scienceの10章をベースに検討する。特にザイマンの自然主義的認識論と、SSK
による科学の相対化やモード2への反論を主な論点として取り上げる。
参考文献
●John Ziman Real Science, 2002 (邦訳は誤訳が目立つので、英語版で検討する)
●ジョン・ザイマン『縛られたプロメテウス』1995=1994.
●三宅「J.ザイマンのアカデミック科学モデル」科学技術研究論文集vol2.21-29 Oct
2004.
●John Ziman “Non-instrumental roles of science” Science and Engineering
Ethics (2003)9, 17-27.